住宅・都市整備公団 宅地擁璧研究会
森下毅-
近頃の住宅外構を見て歩くと、昔に比べてずいぶん豊かになったと思われる。それは、デベロッパーだけでなくユーザーもそれぞれの立場でディテールヘのこだわり、住まい手の個性といったものを外構計画に表現するようになったからだろう。
今回、用意した事例写真をながめてもらいたい。
先ず、国内で比較的上手くできている宅地外構の事例を見てみると、日本的な表現のなかにも様々な工夫が疑らされているのがわかる。そのパーツには、囲障・擁壁・外装・植栽における色々なしかも新しい景観素材がふんだんに用いられるようになった。宅地外構という一番身近な景観を創り楽しむ文化が定着しつつあるのかもしれない。各戸の関心が高いだけに、まち全体もバラエティに富んだ面白さ、美しさ、豊かさを感じることができるようになった。
かつては、此岸と彼岸を分かつ塀の文化に独占され外から垣間みられることを嫌っていた宅地外構の在りようが今では、まちと個、パブリックとプライベートとの境にある領域をどちらからも楽しめるように工夫し、積極的に見せる見られる空間としてしつらえられるようになってきた。これは、狭くて高価な宅地をいかに楽しむかという現代人の執念の現れかも知れないが、沢山の景観素材が開発された事や、欧米的な暮らしが浸透して、住宅規格や外構に対する考え方が明らかに変わってきた事が背景にはある。
そんな中で、日本人であるからにはあくまで純日本的な暮らし向きや箱庭を支持すると言う人もあるであろうし、それはまたそれで大変大事な事でもある。
ただ庶民の手がなんとか届く新興住宅地では、小さくとも庭に日本式庭園を造ることはなかなか難しいようである。
さて、ここでもう一つのグループとして用意した、海外の宅地外構の事例写真を見てもらいたい。日本との違いはなにか。それは一言でいってフローラルなセンスの違いに尽きる。硬いモノの素材は日本よりもむしろシンプルである最新の凝った外構素材などはとんど使っていない。ただ花ものを主とした植材料を使っての表現がなんとも魅力的かつ個性的で豊かである。
これは庭をガーデンとして楽しむ文化と伝統の違いによるものなのかもしれないし、外では野草に詩を詠み内では庭木を楽しむという日本と根本的に異なる園芸文化によるものなのかも知れない。ただ今日、ハーブの流行などに見られるように草花を栽培する家庭がたいへん多くなった。ヨーロッパの写真にある花斉類も今やほとんど日本で栽培され市販されている。それでも、何故か両者の写真に隔たりがあるのは、残念ながら伝統的なセンスの違いによるものなのだろう。
我々の宅地外構を更に豊かにし、日々の生活を楽しみ、また、まちを美しく彩る。そんな将にまちづくりの次元まで宅地外構を高めるには欧米の心憎いまでの素材の使い方と組み合わせの妙を学ぶことが近道のようである。これからは、素材の造り手はもう一歩素材の組み合わせや使い易さにこだわり、ユーザーはさらにフローラルライフを海外に学び、存分に楽しむと言う時代なのではないだろうか。