そのため、全面広場を生み出すために当初計画よりも切土法面を後退させることとなり、広楊面に対して擁壁を生じざるを得ない状況となった。この擁壁を含む長大法面は、ややもすれば景観を損ねる施設ともなりかねないことから、計画・設計の検討を重ねる中で下記の3点の性格を持たせることとした。
(1)街のシンボル
長大法面は、強い性格を持つ景観を街の中に生じさせるものであることを意識し、街のシンボルとして愛称を付けてもらえるような質の高い整備を目指す一方、街を眺めることができる施設整備を行うこととする。
(2)山の顔
長大法面を単なる山の切断面の手当て・修復なのではなく、山の表情を表す顔を捉え、「台地の造形」と言える計画を目指す。
(3)交流の場
前面広場と一体となり、街の交流の場としての機能を果たし、時として、広場に対する舞台あるいは客席となったりする場となることを目指す。
これらを基本方針とし、具体の施設内容を検討した結果、広場を客席空間と見立てた舞台を法面裾部分に整備し、法面下部の擁壁を舞台の背景壁=ホリゾント壁としてデザイン化することとした。これにより広場に対して違和感のない施設となることを目指したものである。また、擁壁上部の法面は現況里山の山頂まで登れる施設整備とし、広場および街を見渡せる展望広場を法面中腹及び山頂部に整備することとした。法面上については植栽により修景することで広場および公園外からの景観に配慮した。法面に向かってホリゾント壁右側には、休養スペースの拠点となる四阿を整備し、その上部は広場を見下ろす展望広場を整備することとした。最終的には、本ホリゾント壁は最大高さ6.8m、擁壁面積約300m2の規模となった。〔図5~8〕